Taylor GuitarsのCSRとは?

Taylor Guitar:テイラーギターのCSRを感じる

こちらの原稿は、2018年3月11日
Taylor Guitar Road Showにて
当時プロダクトスペシャリスト
(現在brand ambassador)
虎岩正樹氏の登壇内容一部を抜粋テキスト化しております。
ギターに詳しくなくとも読めるよう内容の補足致しました。
米国ギター製造企業のCSR事例、皆様のCSR活動の
参考になればと思います。
尚、Tayler Guitarsの2022年度の
従業員数は1,221名 製造本数197,039本
ギター業界のモンスター企業は「環境保全」を行うだけで
なく「木と共生する企業としての使命感・情熱」を
プロダクトに転換していく感動の話です。

Taylor Guitars(テイラーギターズ)創業者は未来のギター界をみて活動している

虎岩氏:
Taylor Guitars(テイラー
ギターズ)社が今、取り組んでいることで、ギター造りだけでなく、その先の部分を
紹介させてください。
ボブ・テイラー(以下:ボブ)という創始者が74年に始めたギターメーカーです。
今はアンディーパーシーという者が新しいギタービルダー(マスタービルダー)としてテイラーのデザインを
フロントでやっています。

では、創始者ボブは何をやっているのか?!

ボブは、今世界中を飛び回っていて全世界のギターに使っている木材の森林保護活動だったり植樹のサスティナビリティ(Sustainability)活動を行い、次世代の人たちもギターを木で造り続けられる世の中・・・
そんな世の中を作っていかなければいけないということで、フルタイムでそのプロジェクトに取り組んでいます。

1ギターにまつわる「木材」環境について

虎岩氏:

(前提として)我々はアコースティックギターのメーカーですが、ギターは木で作られている・・・と言うと、「そんな当たり前のことを言うな」とおっしゃるかもしれませんが、実は様々なギターメーカーでギターを木で作るのを辞め出しています。

指板(フィンガーボード)の部分が木のような人工的な物質だったり、ボディーの横の部分がプリントの木目だったり、
レイヤードと言われる中身の部分がプラッチックだったり、木からの代用ことが起こっています。

もちろん皆さん(他社メイカー)やりたくてやっているわけではなく今まで当たり前のように使えていた木が、使えなくなってきている為の策です。

ご存知でしょうか?
最新のnewsにローズウッドという木材があります。アコースティックギターの業界でボディー材としては王道中の王道です。
エレキギターの世界では指板(フィンガーボード)に使うのは当たり前です。

しかし、
2017年1月2日公式に発効、ワシントン条約で取り締まられる木になりました。
(注:背景アジアにおける家具としてのニーズ、増大を懸念しての処置、特に紅木・レッドウッド、特定の家具を製造するのに使われる熱帯硬材のこと)

カテゴリーで一番上がブラジリアンローズウッド、これは絶対に取引はしてはいけないのですが、その次の2番目に該当するようになりました。

(今現在として)取引はしていいが国境を跨いでの商業的な取引においては厳密な書類が必要になります。(ギターとして)完成品になった後も必要です。

 具体例です。皆さんがローズウッドのギターを持っていてアメリカのオークションに出展し、売れたとします。この個人売買でも書類が必要になります。その位ローズウッドの取引は難しくなりました。

1-2ワシントン条約における木材の今と未来

虎岩氏:

以前までのローズウッドの使われていたモデルのギターから、最近仕様変更等在ったとお気付きだと思います、ローズウッドを使うことによって手間暇、コストが大きくなり、2017年はギターメーカー各社にとって大変な年でした。

そんな中で今までと同様に、無駄に木材を使うわけにはいかないということで

テイラーギターズ社としてはこのローズウッドの件がワシントン条約にのる以前からサスティナビリティ活動に長く取り組んできています。

テイラーギターズには共通のスペックがあります、ブリッジの部分、指板(フィンガーボード)の部分にはエボニー、アフリカンエボニー(黒檀)という材を必ず使っています、これは価格が高いもので安いものでも全部一緒です。

このボニーという材、これが次回のワシントン条約規制対象になるのではないか、もしくは、カマルーンという国が唯一世界で輸出を許している国なんですが輸出を辞めてしまったら大変なことになる、なぜかというと指板(フィンガーボード)やブリッジで使えなくなるということは、ギター業界だけでなく

クラッシックの楽器バイオリンやビオラとかも指板がエボニーです、楽器業界は大変なことになるということで、この問題について現在アクティヴに取り組んでいます。

2ギターにまつわる「木材」環境について

虎岩氏:

皆さんに是非知っていただきたい話があります、エボニーという材は黒檀として訳されているくらいなので黒い木として知られてきているのですが、蓋を開けてみるとあまり黒くないことことがわかりました、実は黒くないエボニーが数としては圧倒的に多いのです、このエボニーが黒くないという現実を知っていただきたいのです。

(では何故、黒いエボニーの木が使われてきているのか)今までは、現地の方々も黒い木を探していました、我々が黒い木しか買わない為に黒い木を探す仕事をしていました。エボニーの木を切ります、切り口を見て、黒くない木は森の中で腐らせてきました密度や硬度は全く一緒でも・・・

黒いエボニーの頻度はどの位の割合かというと、10本中1本が黒いエボニーで残り9本は全く値段の使いない、無駄に伐採してきた現実をボブ・テイラーが現地に行ってわかったことです。

3楽器で使う木材「未来環境」の為にテイラーギターがやっていること

虎岩氏:

我々は、アフリカ:カマルーンに製材工場を持っています。テイラーギターズ社として使う分だけなく、1/3の輸出をサプライヤーとしてメーカー各社(ギターの会社だけなくバイオリンの会社にも)に卸しています。

何故このエボニー材卸のビジネスを始めたかというと、我々が無駄なく使っていかないと、エボニー材はなくってしまう、次のビルダー達の造る材としてはなくなってしまう現実にあります。カマルーンの政府が輸出を辞めてしまったらアウトです、世界で1箇所だけなんですエボニー材の輸出は・・・。

それを皆様に知っていただく為に、テイラーギターズ社はマーケットリーダー全米No1のギターメーカーですので、できることが一つあります。それは皆さんに知っていただくことです。
 テイラーギターズ社は800シリーズフラグシップモデル(最高上位機種)から、(従来のような黒いエボニー材ではなく今まで使われてこなかった)色付きのエボニーを使い出しています。

 スモーキーエボニーというブランド名をつけていますけども、染めることなくこれが自然の色で、木の質として全く何も変わりがないよということで、
全く新しいかっこいいトレンドにしようと全面的にフラグシップモデルに使っています。

虎岩氏:

これをかっこいいか、かっこ悪いかはお客様で決めてください。我々が決めることではないです。ただ、現実として間違いなく言えるのは、これを我々が使っていかないと間違いなく数年で終わってしまいます。

若い世代の方々には受け入れもらってます、むしろかっこいい、自分のギターだとわかってかっこいい。しかし、黒いエボニーを知っている世代からは

「何でこんなフラグシップモデルの指板に色柄のあるエボニーを?」というリアクションがありましたが・・・

前述のエボニーの現実を片隅に知っていただいておくと、これから各社から色付きのエボニー、テイラーギターズ社に共産いただいて出てきます。

某エレキギターメーカーF社もテイラーギターズ社から仕入れてた色付きのエボニーを指板で採用したモデルが出ます。

この色付きのエボニーを我々が広めていかないと、どこかで大きな障害が出てきますので、お客様も含めてこのストリーは知っていただたいというのも含めて、カタログにもアフリカ製材工場の現状、最新の情報が出ております。

ZAP補足:F社は ご存知のFender社、Fender American Acoustasonic で使用されています。

虎岩氏:

最先端のソーシャルとしてのビジネスの価値も様々なところから認められていています。ボブテーラーが前回の楽器フェアーで来日した際もギター雑誌だけでなく経済誌でもインタヴュー出ています、そのコピーも皆様に今日お配りします。出ております

ギターメーカーとしては、かなり大きなプロジェクトに取り組んでいるんですけども、アフリカの現地にUCLA大学とカマルーンの政府と共同でリサーチセンターを作りまして、エボニープロジェクトに着手しました。

エボー材はギター・楽器業界で400年使われているそうです。
誰も一回も植えることをしてこなかった・・・

切り崩してきただけなので全世界から絶滅してきたらしいです、当たり前の話ですが。

初めて苗木を育てることに成功しました。
我々はエボニーを育てることにも取り組んでいます。

Taylor Guitarsのまとめ

如何だったでしょうか?
少々時間経過のある内容ですが、テイラーギターズのCSRをまとめてみました。YOUTUBEで
「Taylor Guitar Road Show」と検索すると、楽しい動画も出来てきますので是非ご覧になられてください。

そして、この話には続きがあります・・・。ボブ・テイラーによる「木材保護の活動」は、スタッフたちの意識に浸透し
行動が変わってきます。

ある時、スタッフが(マスタビルダー:アンディ・パワーズだったと思います)近所の街路樹を伐採している業者を見かけます。そして、その木が運ばれた処分場を探し当て、どんな木なのかを確認したところ、どうも・・・ASH(アッシュ)材に似ていることからこの木を譲ってほしいとお願いしますが、それは叶いませんでした・・・。

上記のエボニー材の保護活動をきっかけに、レギュラーで使われているギター材以外にも、
ギター制作に使える材木があるのではないか?材の探求は続き
街路樹の中には、マホガニーに似た木を発見するなど、新い価値を生み出す動きへと繋がりをみせています。